父がつくった歯科医院の舵取りを任され安心安全を徹底した医院で新たな歴史を刻む
青森県三戸郡五戸町字熊ノ沢25-6 小村歯科医院
(写真左:会長 徳行先生 写真右:院長 圭介先生)
カルテを引き継ぐことができる大きなメリット
30年続く青森県五戸町の小村歯科医院が2021年5月、それまであった建物の隣に新築移転し、新たな出発をした。そのきっかけとなったのがのちに2代目院長となる小村圭介先生のUターンだった。
圭介先生は幼い頃から父の徳行先生が診療する姿を見てきた。地域住民から慕われる父は子どもの目にも恰好よく、いつしか自分もそのような歯科医師になりたいと思うようになった。
その希望を叶えるため、岩手医科大学歯学部へ進学。青森県中央病院歯科口腔外科で研修医として働いたのち、岩手県盛岡市の歯科医院で口腔外科とインプラント治療の基礎を習得した。そして2017年、29歳のとき故郷、五戸町に戻った。
「父の治療は非常に丁寧で、見習う点がたくさんあり、今なお多くを学ばせてもらっています。父の経験は私にとって重要なエビデンスです」と圭介先生。
一方、徳行先生は「それまで私一人でジャッジメントしなければいけなかったのが、息子が戻ってきてから2人でできるようになりました。自分以外の目が入るようになり、以前にもまして私は真剣に歯科医療に取り組むようになりました。多分、息子が戻ってからの私の歯科医師としてのレベルは非常に上がったと思います。息子に感謝しています」と話す。
圭介先生が父の歯科医院で診療するようになり、よかったと強く思うことがもう一つある。患者さんのカルテが残っていることだ。「その患者さんの口腔内がかつてどういう状態だったのが、どういう歯の治療を受けたのかといった多くの情報がカルテに集約されています。それらの情報は診療するうえで非常に貴重です。代が続くからこそ、こうした情報が蓄積され、それを私が受け継ぐことができます。これは大きなメリットです」と圭介先生は強調する。
2020年、圭介先生は小村歯科医院を正式に継承した。
滅菌・メンテナンス機器を導入するなど感染対策を徹底
元々、小村歯科医院は徳行先生一人が診療するのに合わせて設計されたものだ。そのため、2人で診療を行うと、どうしても手狭感が否めなかった。しかも時間が経ち、開業時とは違うさまざまな要素が歯科医院に求められるようになり新築移転を検討しはじめた。それを後押ししたのが2019年暮れから世界中に広がった新型コロナウイルス感染症だった。
「父が開業した30年前とは比べものにならないくらい医療施設での感染対策への関心が高まっていたところに、コロナ禍でさらに徹底した感染対策が必要になりました。従来の施設では対応が難しく、これを機に新築移転計画を本格的に進めることにしました」
幸い、それまであった建物の隣の土地を譲り受けることができ、患者さんへの迷惑も最小限ですませられることになった。
2021年5月より、安全・安心な新しい小村歯科医院がオープンした。
新医院を建てるにあたって圭介先生が最も重視したのが患者さんやスタッフが戸惑わないことだった。そのため、レイアウトは旧医院とほぼ同じにした。ユニットを2面の壁に沿ってL字に並べ、レントゲン室も旧医院と同様、その角に配置した。
「当医院には、開院時から来られている患者さんが多いので、慣れ親しんだ動線を維持したかったのです。スタッフも同じで、動線がそれまでと違うと慣れるまで時間がかかり、その分、診療に少なからず影響が出てきます」と圭介先生は説明する。
新しい小村歯科医院には、かつてなかった設備が多く導入された。まず、個室のオペ室。圭介先生が得意とする口腔外科やインプラント治療を個室なら安心して行うことができる。それに併せてカウンセリング室も用意した。一般歯科診療はパーテーションをつけて半個室に。また、小さなお子さんを連れた患者さんがお子さんの様子を見ながら治療を受けられるようにと、ユニットのそばにキッズスペースを設けた。さらに、明るく開放的な待合室の一角には、患者さんがくつろいだり、お子さんが宿題をしたりと待ち時間を思い思いに過ごせるよう小上がりを設けた。
▲カウンセリング室
奥に見えるのは院長が東京オリンピック2020で聖火ランナーを務めた際のトーチ
▲小上がり
待合室の小上がりでは、お子さんが待ち時間に宿題をすることも
▲待合室の一角には、会長の奥様が週替わりで生ける季節の花々が
もちろん、感染対策にはとりわけ注力した。感染リスクが高いとされる医療器具については、器具除染用洗浄器「オサダNDウォッシャー」、インスツルメント専用自動注油装置「オサダオートルーブ」、小型包装品用高圧蒸気滅菌器「サーボクレーブ」と「プチクレーブ」の4種のオサダの滅菌・メンテナンス機器を導入し、可能な限りの感染リスク軽減を図った。また、高性能の空気清浄機を待合室と診察室の天井に取り付けた。
「今回改めて感じたのは環境整備のハードルが非常に高くなっていることです。おそらく当院の感染対策がこれからは歯科医院のスタンダードになるのではないでしょうか。洗浄や滅菌の手間は以前より増えましたが、その分、患者さんたちにより安心・安全を提供できています」(圭介先生)
オサダのアフターサービスはピカ一。オサダのファンを自認
新医院の滅菌・メンテナンス機器をオサダ製品で揃えてくださったことからもわかるように、徳行先生も圭介先生もオサダの大ファンだ。
小村歯科医院とオサダとの縁は約18年前にさかのぼる。徳行先生が4台目のユニットとしてオサダのスマイリーNを導入したことが始まりだ。「オサダさんはアフターサービスがとにかく素晴らしい。その担当者だけが特別なのかなと思っていたら、次の担当者に替わってもまったく同じ対応でした。以来、ユニットを入れ替えるときはオサダ製に決め、最終的には4台すべてがオサダ製になりました」と徳行先生から嬉しいお言葉をいただいた。
圭介先生も「五戸町は交通のとても不便な場所にあります。それなのに、連絡をするとすぐに飛んできてくれます。父は以前から、オサダさんのアフターサービスはピカ一と褒めていましたが、本当に父の言葉どおりでした」と続けてくださった。
新築移転で診療室が広くなったため、新たにオサダスマイリーNプラスが導入された。「座面は斜めになっているタイプがはやっているようですが、私は患者さんの真正面から診療することが多いので、足折れタイプを選びました。とても診療しやすいし、高齢の患者さんたちも座りやすいと好評です」と圭介先生は笑顔を見せる。
受診前から歯科医療を提供し、歯をできるだけ残したい
圭介先生は講演活動を積極的に行い、地域住民に歯科の知識や歯の大切さ、歯の健診を受けることの大切さを伝えている。そこには、圭介先生のこんな思いがある。「これまでの歯科医療は歯周病やむし歯など口腔内トラブルが生じて来院する患者さんを治療することに重きが置かれていました。それはとても大切ですが、私はそれに加えて、患者さんたちに歯科医院を受診する前から歯科医療を提供したいと考えています」。
圭介先生がこう思うようになったのは、五戸町に戻ってからだ。
「入れ歯やインプラント治療をして喜んでくれる人はいますが、入れ歯やインプラントに憧れて受診する人はまずいません。そもそも歯は一度削ってしまうと、二度と元には戻りません。住民の方々にとって一番望ましいのは、いつまでも好きな物をおいしく食べること。それには、歯をできるだけ残すことが大切です。それを尽力することが歯科医師としての私の役目です」
圭介先生は小村歯科医院を船に例えて、「この船には父が診療してきた患者さんとスタッフが乗っています。その船の舵取りを任された以上、転覆させないで航海するのが私の責務。父への感謝や尊敬の気持ちを忘れずに、皆が小村歯科医院という船に乗ってよかったと思ってくれるように舵取りをしなければならないと常に自分に言い聞かせています」と落ち着いた口調で語った。
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