いきいきと働く女性スタッフたちが印象的な心地良い歯科医院

小野正美院長

宮城県仙台市青葉区南吉成3-1-23 まさみ歯科


女性が働きやすい歯科医院づくり

緑豊かな仙台市の中心部から車で30分ほど行くと南吉成タウンプラザという大規模なショッピングセンターが見えてくる。その中に複数の診療科の医療機関が集まったメディカルスクエアがある。まさみ歯科はメディカルスクエアを構成する医療機関の一つだ。

まさみ歯科の入口には2体のかわいい人形が置かれ、来院する患者たちを笑顔で迎えてくれる。中に入ると待合室にはアロマのほのかな香りが漂い、歯科を受診する緊張感がすっと和らいでいく。その和らぎをさらに促してくれるのが受付担当スタッフのぬくもりのある笑顔だ。「これなら安心して歯の治療を受けられそう」、おそらく初めて来た患者は誰もがそう思うに違いない。

その期待は診療が始まってからも裏切られることはない。先生方や歯科衛生士たちは患者の歯の悩みや困りごとに熱心に耳を傾け、その人にとって最善の診療を提供する。「患者に寄りそう」という姿勢がまさみ歯科のスタッフ全員に浸透していることがわかる。そして、何よりもスタッフたちがいきいきと楽しそうに仕事をしているのが気持ちいい。

院長の小野正美先生がまさみ歯科をオープンしたのは2002年。日本歯科大学新潟生命歯学部を卒業し、3院の歯科医院で研鑽を積んだのち、自分の歯科医院をもちたいという夢を叶えた。

開院するにあたって一番苦労したのが歯科衛生士を揃えることだった。当時も今と同じように歯科衛生士が不足していた。小野先生は元歯科衛生士だった女性たちに話を聞いた。彼女らの口から出てきたのは「子どもができてから復職するのは難しい」という言葉だった。子どもが急に発熱して休まなくてはならなくなったとき、他のスタッフに迷惑をかけてしまうのが辛いという人や、中には院長先生に嫌な顔をされたことがあり、一度は復職したけれどすぐに辞めたという人もいた。「彼女たちの話はとても衝撃でした。歯科の医療現場に大きな問題があると思いました」。そのとき小野先生はこう決意した。自分のクリニックは女性が働きやすい職場にしよう──。

▲受付スタッフの業務軽減や衛生面を考慮して自動釣銭機を導入


福利厚生の充実に加え、人材教育にも注力

開院して20年、この間、小野先生は女性たちが働きやすい職場づくりを徐々に進めてきた。例えば、産休・育休制度を導入し、安心して子どもを産み、育てられる環境を整えた。また、正社員からパートタイム勤務へ、あるいはパートタイム勤務から正社員へと、本人の希望に応じて雇用形態を変更できるようにした。

「実際に、出産や育児から復帰を果たしたスタッフが3名いますし、産休・育休制度を2度も利用したスタッフもいます。お子さんが急に発熱して休まなくてはいけなくなっても、心配は無用です。当医院には主婦や育児中のスタッフが多数いるので、そうした事情をよく理解していて、スタッフ同士で業務をカバーし合っています」と小野先生。

まさみ歯科では、健康保険や雇用保険、労災、厚生年金までも含めた社会保険も完備している。また、仕事だけでなくプライベートも充実させてほしいと2021年4月から完全週休2.5日を実現させた。

福利厚生の充実度にも目を見張るものがある。年に一度の健康診断費用、インフルエンザ予防接種の費用補助、人間ドックでの婦人科系検診の受診料補助、一人暮らしのスタッフへの住宅手当支給、奨学金支援制度(ただし3年以上勤務)等々。まさに至りつくせりの充実ぶりだ。

こうした職場環境づくりに加え、スタッフ教育にも注力している。月1回3時間の院内勉強会や2カ月に1回の外部コンサルタントによる勉強会を診療時間内に実施するほか、研修会参加手当や、教材費から資格取得費まで医院が負担する資格支援取得制度も用意している。この資格支援取得制度を利用して、これまでに「トリートメントコーディネーター」資格を取得した歯科助手や、「糖尿病予防指導認定衛生士」資格を取得した3名の歯科衛生士が誕生している。

「資格取得を通じて得た技術や知識は患者さんに還元できます。また、糖尿病予防指導認定衛生士がいるからと内科の先生が糖尿病の患者さんを当医院に紹介してくれることもあります。資格取得があれば彼女たちが当医院を“卒業”して、次の職場に行くときのアピールポイントになります。患者さん、まさみ歯科、彼女たちの三方にプラスになるのが資格取得だと考えています。スタッフたちにはこれからもどんどん資格を取得してほしい」と小野先生は話す。


パーツを滅菌できるオサダライトサージを導入

コロナ禍で感染対策の重要性がいわれているが、まさみ歯科ではそれ以前から、グローブやエプロン、紙コップの使い捨てや治療中の粉塵を吸い取り口腔外バキュームの使用、診療台や操作パネルなどの消毒液による拭き掃除などを徹底してきた。

2021年1月に半導体レーザーのオサダライトサージセルビーを導入したが、その大きな決め手となったのがパーツ一つひとつを滅菌できることだった。

まさみ歯科は「歯科外来診療環境体制加算(外来環)」を算定している。この外来環の施設基準の中に、歯科診療中に体調不良などの緊急事態が起きたときに対応できるようAED(自動体外式除細動器)などの医療機器の設置や、医科医療機関と連携体制の確保などのほかに、口腔内で使用する歯科医療機器等についての洗浄・滅菌処理の徹底などの感染症対策が挙げられている。

「滅菌ができるオサダライトサージは、外来環という視点からも導入に適した医療機器です」と小野先生は言い、さらにこう続ける。「コンパクトなサイズなのにパワーが強く、素早く切除できて止血効果も高く、治療時間も短くてすみます。しかも、片手で軽々と持てるほど軽量なので、準備するのに楽だとスタッフたちからも好評です」。


訪問歯科診療を機に「か強診」に

まさみ歯科に開院当初から通い続けてきた患者の中には、高齢になって通院が困難な人が現れてきた。最後まで口腔内をケアしたいと小野先生は訪問歯科診療を始めた。「当初は1年に数件でしたが、当医院が訪問歯科診療をしていることが知られてきたのか、最近は月に2、3件にまで増えてきました」。また、この訪問歯科診療をきっかけにまさみ歯科は「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」として認可された。

 か強診は、高齢者についての医療知識を習得した常勤歯科医師が1名以上配置されていること、訪問歯科診療にも緊急時に迅速に対応できることなど、厳しい要件が定められている。そのためか、か強診に認定されているのは歯科医院全体の20%程度に留まっている。

 訪問歯科診療に取り組み始めて小野先生が気づいたことがある。「家族が『イライラして本人に当たってしまう』『昨日は食べられたのに今日は食べられないのは自分が作る食事が悪かったのではないか』など悩みをよく話されるのです。育児と介護の大きな違いは先が見えないこと。在宅療養を支えるには、本人だけでなく家族のケアも大事だと感じました」。小野先生は将来、ケアマネジャーの資格を取り、より深く地域の人々と関わっていきたいと考えている。


まさみ歯科の温かさはスタッフの温かさだった

まさみ歯科では毎年4月、方針発表会を開いている。その際、小野先生は医院としての今後1年間の目標を掲げる。今年掲げたのはチーム力のアップだ。そこで小野先生が取り入れたのが、NASA(アメリカ航空宇宙局)が宇宙飛行士の採用試験のために開発したといわれるNASAゲームだ。これは、チームで話し合いながら1つの結論を導き出すコンセンサスゲームの一種だ。「優勝したチームにはプレゼントを贈っています。何でも楽しくするのが当医院のやり方」と小野先生は笑顔で話す。

育休スタッフがいたり、夫の転勤の都合で退職したスタッフがいたりして、現在、まさみ歯科では歯科衛生士・歯科衛生助手を募集中だ。「まさみ歯科は採用基準が厳しいんです(笑)。私やスタッフが、この人は人柄がいい、この人と働きたいと思わないと採用しません。相性って大切ですから」。あとでマッチしなかったという後悔が起こらないようにまさみ歯科では院内見学会を用意している。

まさみ歯科を包む何ともいえない温かさはいきいきと楽しそうに仕事をしているスタッフたちの温かさでもある。そして、その背景にはこうした小野先生の細やかな配慮と工夫があったのだ。

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